無傷の愛/岩井志麻子

無傷の愛  岩井志麻子/著 双葉社

「ぼっけえ、きょうてい」を読んだ時の衝撃から5年以上が経つ。
ホラー大賞を受賞していたことと、その妙なタイトルから手にした本だったが、
数行読み進んだだけで、岩井志麻子の描くおどろおどろしい世界の虜になってしまった。

それ以来、かなりな本を読んでいたが、エロトーク全開のTV出演を見てしまった後では、
登場人物、主に、主人公と岩井志麻子の顔がダブることが多くなってしまった。

俺は、一般的にもそうだと思うが、映画を見た後に原作本を読むと、
どうしても映画の主人公の顔で話が進んでしまうのだ。

登場人物のイメージを自分で作りたい性質の俺としては、いささか困る。
この場合、岩井志麻子のことだが、
油断していると、岩井志麻子の本の多くの主人公達は、
そのほとんどが岩井志麻子顔で話が進んでしまうのだ。
明らかに表現している容姿と違う場合でも。
(そのほうが頭の中が楽なのでしょう)

「ぼっけえきょうてい」を読んだ時は、作家の顔は知らないわけで、
できれば、その時の思い込みのない自分に戻りたい、というのが実感。
きっとその方が楽しめる。

さて、無傷(むしょう)の愛は、
岩井志麻子の得意とするホラー恋愛の短編集。
小編のタイトルには「姉妹の部屋」、「偶像の部屋」といったように、
10個の部屋の名前がついているが、どの作品もハズレなし。
愛憎劇の中で壊れていく男女の話で、もちろんハッピーエンドはありゃしない。
複数の登場人物の語りで進められていく手法も怖さたっぷり。
アジア系の人達の語り部分に違和感がないのは、岩井志麻子ならでは。
何篇かはエスニック・ラブホラーと呼びたいくらい、
得体の知れぬアジアの恐怖がほとばしってます。

★★(最近作の中では一番好き)