ヘルメットをかぶった君に会いたい/鴻上尚史

ヘルメットをかぶった君に会いたい 鴻上尚史/著 集英社

ネタバレ有


図書館で何気なく手にした本は、確かに小説の棚にあった。
ところが、ところが、ここがポイントなのだが、
2~3日間、読まずにテーブルに積んでいただけで、
そのことをすっかり忘れてしまった。

結果オーライ、アホまるだし、
俺はこの本をノンフィクションとして読んだのだった。
だって、そういう書き方なんだもん。

後半部、主人公の僕(鴻上)が、
諫早湾の堤防を爆破しましょう」と迫る男と、
二人してラブホテルで酒盛りをする段になって、
こんなドラマのような展開あるか?と一瞬疑ったが、
なんせ、ノンフィクションとして読んでいるので、疑いは無視して読み進めた。
ラスト近く、いよいよ爆破しに諫早湾に行くことになっても、
まだノンフィクションと信じていた。
爆破が実行されずに、爆弾を堤防にそのまま残した時点で、
ありゃりゃ???となったが、もう残り数ページ、そのまま完走。

読後、冷静になって、これは小説なんだと初めて確信することができたが、
俺は幸せ者、そこまでアツくなって読めるなんて。

鴻上尚史とは、ほとんど同世代なので、書いてあることがズンズン胸に響いたのだ。
学生運動に世代としてのり遅れてしまった焦燥感を共有している。
第三舞台の演劇も見てないし、鴻上尚史のことをほとんど知らないことも幸いした。
ひょっとしたら爆破しにいっちゃうヤツなのかと思えたから。

フィクションとわかっても失望感はなし、小説としての出来不出来も関係ない。
小説は形式で、これは鴻上尚史の舞台そのものだろう。
だから肌を伝わってくる強い『思い』を感じることができた。

★★★(この本に出会えてよかった)