無痛/久坂部羊

無痛 久坂部羊著/幻冬舎

ネタバレ有

医師が書いてる病院サスペンス。
生きてる人間解剖しちゃうような怖~いシーンがあるので、
スプラッター系サスペンスといってもいいのかも。

ぶ厚いのでゆっくり読もうと思っていたのだけど、一晩で読んでしまった。
筆力が高い上、専門家だからといってとくに難しい話が無いのもよい。

ただ、一晩で読んだからといっておもしろかったか?と言われると×。
登場人物のキャラクターは立ってるし、新しいアイデアもあってセンスはいい。
でも、何かが足りない、ワンパンチ。

物語の後半、盛り上がるはずの“おいしいシーン”が、
幾度となくスルリとかわされてしまうのだ。
セックスシーンであったり、暴力シーンであったり、主にアクション系。
そこのところを読者の想像力まかせにされたのでは居心地悪いのだ。

書けないのか、長くなりすぎるので書かないのか?

日本の医療や法律に関しては訴えたいことがあるのは登場人物を通して伝わってくる。
でも、俺が小説に望むものは、そんな作家のメッセージより、
脳ミソをかき回すようなストーリーや仕掛け、想像力を刺激する表現だ。

ひとことでいえば「薄っぺらさ」だけが、読後感だ。

薄っぺらく感じるのは、結末のせいもあるだろう。
殺人の動機が納得できない。
かわいい妹や子供を陵辱でもされたというならまだしも、
バカな女に振られて自殺するダメ弟のために、
地位も名誉も捨てて彼女の家族全員殺すか?
生まれつき片方の玉が1個ないくらいで、殺人に至るほど人間壊れるか?

というわけで、惜しい! 
まだまだ新人なんだよね、幻冬舎編集しっかりせんかー。

万作の評価:★(怖い怖い解剖シーンに★1つ)