ハンニバル・ライジング(映画)

ハンニバル・ライジング(映画)

監督:ピーター・ウェーバー 主演:ギャスパー・ウリエルコン・リー

トマス・ハリスの「レクター」シリーズの4作目。
ハンニバル・レクターの幼少時~青年期の映画で、
いかにレクター博士が怪物になっていったか…という話。

レクターシリーズ(原作)はどれも面白かったのだが、
俺にとって一番想像力を刺激されたのが、この「ライジング」。

レクターの幼少期、第二次世界大戦リトアニア
ドイツ占領下での凄惨な体験と、戦後の復讐劇。
血なまぐさいシーンがシリーズ中で最も多いのだが、
前半部の東ヨーロッパでの暗~い時代背景と、
後半部、パリを舞台にしたミステリアスな日本女性の登場で、
その残虐シーンを、いかにも「アリ」と思わせてくれる。

ただ、原作を読んだ時点で映画化は相当難しいと考えていた。
ややっこしい登場人物やエピソードをどう整理するのか?
激しい暴力描写をどうするのか?

映画を原作以外の何の前知識もなく見る。
前半数十分で、この脚本スゴイ!と思った。
端折り方が上手い。単純にシェイプアップするだけでなく、
改編部分(オリジナルとは違う)を作って違和感なく仕上げている。
後で調べれば、脚本家はトマス・ハリス/原作者。なるほど。

オレがこの映画を見て、一番驚いたことは、
原作を読んで頭の中で作ったイメージと違わなかったこと。
原作→映画のパターンで作品を見た場合、これは稀有の例。
映像のもつ空気感が素晴らしい。

一方、作品の完成度ではイマイチ。
復讐ストーリーに特化した映画になってしまったこと。
アクション中心の後半部が一本調子で楽しめなかった。
人と人との絡み、人間関係がゴッソリ抜け落ちている。
レディ・ムラサキのエロさ、敏腕刑事のネチっこさ、悪ボスの極悪非道ぶりなど、
原作ベースにした描き様がもう少しあったハズ。
前半で期待させてくれただけに残念だった。

★☆(十分楽しめたけど、二度は見ないな)